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分子集団研究系 分子研リポート2004 | 分子科学研究所

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(1)

3-5 分子集団研究系

物性化学研究部門

薬 師 久 彌(教授)

A -1)専門領域:物性化学

A -2)研究課題:

a) 分子導体における電荷整列相転移の研究

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 電荷の局在化に起因する金属・絶縁体転移では,電子の局在化に伴い,電子のいる所といない所ができるために電荷 分布に濃淡が発生する。この濃淡は通常格子の変形と結合しており,ある特定の方向に電荷が配列する電荷整列状 態をとる。この現象は分子導体の伝導電子が遍歴性と局在性の境界領域に位置しているためであり,多くの分子導 体で普遍的に起こる現象である。我々はこのような物質を振動分光法を用いて研究する方法を開発して研究を続け ているが,本年度は以下のような結果を得た。

(i)B E D T -T T F 赤外活性モード:従来B E D T -T T F 電荷移動塩の電荷整列状態を研究するのにラマン分光法を主として用い ていた。昨年の分子研リポートに報告したようにラマン活性モードは分子上の電荷だけでなく振電相互作用のよって大きく分 裂する。赤外活性モードは振電相互作用をしないので,B E D T -T T F 分子の二つの5員環のC =C が反位相で伸縮する振動 モード(ν27)の価数依存性について検討した。その結果,B E D T -T T F

+

ν27の帰属が従来のものと異なること,また,平面構 造のB E D T -T T F

0

ν27の振動数は舟型のB E D T -T T F

0

に比べて25 cm–1も高波数側へシフトすることを見出した。この二つ の新しい結果を踏まえてB E D T -T T Fの価数とν27の振動数との直線関係を示す式を決定した。この式は電荷整列状態にあ る様々な B E D T - T T F 塩の価数を矛盾なく説明できる事が分かった。ラマン活性なν2についても同様な式を得た。θ- 型の B E D T -T T F 塩では中性分子に近い価数の分子のν2が直線から外れるが,これは最高波数のν3モードとの混成現象のため であることを理論模型を用いて半定量的に説明する事に成功した。

(ii)θ-型BEDT-TTF電荷移動塩:電荷整列相転移を示す電荷移動塩と超伝導転移を示すθ-(BEDT-TTF)2I3の中間に位置 するθ-(BEDT-TTF)2C sZ n(S C N)4を振動分光法を用いて研究した結果,この物質は室温から低温6 K に至るまで,大きな不 均化を起こさないことが分かった。また,θ-(BEDT-TTF)2R bZ n(S C N)4の急冷相と高温相はいずれも電荷整列相と同様に不 均化を起こしている事が分かった。電荷整列相との違いは不均化率で,両者ともかなり広い不均化率の分布をもっている。 高温相は金属で期待されるフェルミ速度よりも100以上遅い速度で揺らいでいるという異常な電子状態である事が分かった。 ( i i i )β”- 型BEDT -T T F 電荷移動塩:昨年のβ”-(BEDT -T T F)3( R eO4)2に続いて,今年度はβ”-(BEDT -T T F)3( H S O4)2β”- (B E D T -T T F )3(C lO4)2,β”-(BEDT-TTF)3C l2(H2O)の金属・絶縁体転移を赤外・ラマン分光法で調べ,電荷整列状態への相 転移であることを明らかにした。電荷整列相転移がα-型やθ-型だけでなくβ”-型のBEDT-TTF 塩においても発現している ことを証明した。

(iv)β”-(BEDT-TTF)(TCNQ)の赤外・ラマン分光: β”-(BEDT-TTF)(TCNQ)は温度を下げることにより,不均化した電子状態 から均一なバンド的電子状態へと変化することを昨年見出した。高圧下においても同じ現象が観測されることから,これが

(2)

移動積分の増加によるものであることを証明できた。また,室温において,2倍の単位格子に相当する超格子を発見した。こ のことは,室温における電子状態が動的な電荷整列相であり,集団的に揺らいでいる可能性を示唆している。

(v)電荷整列相では,多くの電荷移動塩の電荷移動吸収帯の3000 cm–1付近に大きな窪みが観測される。これが,大きな振 電相互作用を持つ振動モードの倍音によるバイブロニックバンドであることを理論模型を用いて証明した。特に,この窪み が強く観測されるためには電荷の不均化が必要であるので,この倍音による窪みは電荷整列状態が発現していることを示 す有力な証拠となる。

B -1) 学術論文

K. SUZUKI, K. YAMAMOTO and K. YAKUSHI, “Charge-Ordering Transition in Two Crystal Modifications of θ-(BEDT- TTFR)2TlZn(SCN)4 Studied by Vibrational Spectroscopy,” Phys. Rev. B 69, 085114 (11 pages) (2004).

R. SWIETLIK, K. YAKUSHI, K. YAMAMOTO, T. KAWAMOTO and T. MORI, “Infrared and Raman Studies of TTM- TTP and TSM-TTP Charge-Transfer Salts,” J. Mol. Struct. 704, 89–93 (2004).

O. DROZDOVA, K. YAKUSHI, K. YAMAMOTO, A. OTA, H. YAMOCHI, G. SAITO, H. TASHIRO and D. B. TANNER,

“Optical Characterization of 2kF Bond-Charge-Density Wave in Quasi-One-Dimensional 3/4-Filled (EDO-TTF)2X (X = PF6, and AsF6),” Phys. Rev. B 70, 075107 (8 pages) (2004).

T. YAMAMOTO, K. YAKUSHI, Y. SHIMIZU and G. SAITO, “Infrared and Raman Study of the Phase Transition of θ- (ET)2Cu2(CN)[N(CN)2]2,” J. Phys. Soc. Jpn. 73, 2326–2332 (2004).

T. YAMAMOTO, M. URUICHI, K. YAKUSHI, J. YAMAURA and H. TAJIMA, “Infrared and Raman Evidence for the Charge-Ordering in β”-(BEDT-TTF)3(ReO4)2,” Phys. Rev. B 70, 125102 (11 pages) (2004).

B -2) 国際会議のプロシーディングス

R. SWIETLIK, L. OUAHAB, J. GUILLEVIC and K. YAKUSHI, “Infrared and Raman studies of the charge ordering in the organic semiconductor κ-[(Et)4N](ET)4Co(CN)6·3H2O,” Macromolecular Symposia 212, 219–224 (2004).

P. TOMAN, S. NESPUREK and K. YAKUSHI, “Quantum chemical study of oxidation processes in metal-phthalocyanines,” Macromolecular Symposia 212, 327–334 (2004).

R. SWIETLIK, K. YAKUSHI, K. YAMAMOTO, T. KAWAMOTO and T. MORI, “Phase transition in the organic conductor (TTM-TTP)I3 studied by infrared and Raman spectroscopy,” J. Phys. IV France 114, 87–90 (2004).

K. YAKUSHI, M. URUICHI, H. M. YAMAMOTO and R. KATO, “Dynamical Fluctuation of the site-charge density in metallic β”-(BEDT-TTF)(TCNQ),” J. Phys. IV France 114, 149–151 (2004).

K. YAMAMOTO and K. YAKUSHI, “Electron-molecular vibration coupling effect on the Raman spectrum of organic charge-transfer salts,” J. Phys. IV France 114, 153–155 (2004).

K. SUZUKI, K. YAMAMOTO and K. YAKUSHI, “Charge-ordering in θ-(BEDT-TTF)2MM’(SCN)4 [M = Cs, Rb, Tl, M’ = Zn, Co],” J. Phys. IV France 114, 379–381 (2004).

R. WOJCIECHOWSKI, A. KOWALSKA, J. ULANSKI, M. MAS-TORRENT, E. LAUKHINA, C. ROVIRA, V. TKACHEVA, K. YAMAMOTO and K. YAKUSHI, “Raman studies of the charge ordering and semiconductor-metal phase transition in polymorphic forms of (BEDT-TTF)2Br1.3I1.1Cl0.6,” J. Phys. IV France 114, 393–395 (2004).

(3)

T. YAMAMOTO, M. URUICHI, K. YAKUSHI, J. YAMAURA, H. TAJIMA and A. KAWAMOTO, “Charge disproportionate state of BEDT-TTF β”-salts,” J. Phys. IV France 114, 397–399 (2004).

H. YAMOCHI, T. HANEDA, A. TRACZ, J. ULANSKI, O. DROZDOVA, K. YAKUSHI and G. SAITO, “Humidity sensitive conductivity of (BEDO-TTF)2Br(H2O)3 as a bulk property,” J. Phys. IV France 114, 591–593 (2004).

B -3) 総説、著書

K. YAKUSHI, K. YAMAMOTO, R. SWIETLIK, R. WOJCIECHOWSKI, K. SUZUKI, T. KAWAMOTO, T. MORI, Y. MISAKI and K. TANAKA, “Spectroscopic studies of charge-ordering system in organic conductors,” Macromolecular Symposia 212, 159–168 (2004).

B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員

日本化学会関東支部幹事 (1984-1985).

日本化学会東海支部常任幹事 (1993-1994, 1997-1998). 日本化学会職域代表 (1995- ).

日本分光学会東海支部支部長 (1999-2000). 学会の組織委員

第3,4,5,6,7, 8回日中合同シンポジウム組織委員(第5回,7回は日本側代表,6回,8回は組織委員長)(1989, 1992, 1995, 1998, 2001, 2004).

第 5,6,7回日韓共同シンポジウム組織委員(第 6回,7 回は日本側代表)(1993, 1995, 1997). 学会誌編集委員

日本化学会欧文誌編集委員 (1985-1986). 文部科学省、学術振興会等の役員等

日本学術振興会特別研究員等審査会専門委員 (2000-2001). 科学研究費委員会専門委員 (2002-2004).

その他

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NE D O)国際共同研究評価委員 (1990). チバ・ガイギー科学振興財団 選考委員 (1993-1996).

東京大学物性研究所 共同利用施設専門委員会委員 (1997-1998, 2001-2002). 東京大学物性研究所 物質設計評価施設運営委員会委員 (1998-1999).

B -8) 他大学での講義、客員

名古屋大学理学部 , 「分子機能化学特別講義2(分光学的手法による分子導体の電子構造研究法)」, 2004年 11月 24日 - 25 日 .

(4)

B -9) 学位授与

鈴木研二 , 「Vibrational spectroscopic study of quasi-two-dimensional organic conductors, θ-(BEDT-TTF)2MM’(SCN)4 [M

= Cs, Rb, Tl; M’ = Zn, Co]」, 2004年 3 月 , 博士(理学).

B -10)外部獲得資金

特定領域研究(A ), 「分子性物質の電子相関と電子構造」, 薬師久弥 (1994年 -1996年). 特定領域研究(A ), 「π-d電子系分子導体の固体電子物性の研究」, 薬師久弥 (1997年-1997年). 基盤研究(B ), 「金属フタロシアニンを主とするπ-d電子系の研究」, 薬師久弥 (1997年-2000年).

特定領域研究(B ), 「π-dおよびπ電子系分子導体の磁性・電気伝導性の研究」, 薬師久弥 (1999年-2001年). 特別研究員奨励費 , 「分子性導体における電荷整列現象のラマン分光法による研究」, 薬師久弥 (2001年 -2002年). 基盤研究(B ), 「分子性導体における電荷整列現象の研究」, 薬師久弥 (2001年 -2003年).

特定領域研究 , 「分子導体における電荷の局在性と遍歴性の研究」, 薬師久弥 (2003年 -2007年).

奨励研究(A ), 「顕微赤外共鳴ラマン分光法による種々の分子配列様式をもつ有機伝導体の電荷状態観測」, 山本 薫 (2000 年 -2001 年).

若手研究(B ), 「遠赤外反射スペクトルによる二次元電荷整列系の電子構造解」, 山本  薫 (2002年 -2003年).

C ) 研究活動の課題と展望

電荷整列状態を研究する上で,電荷整列相と超伝導相の関係を明らかにすることは大きな課題である。θ-(BEDT-TTF)2

CsZn(SCN)4は電荷整列相,金属相,超伝導相がどのように現れるかを統一的に理解する上で重要な位置を占めている物

質である。今年度,我々はθ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4が大きな不均化を示さないこを明らかにした。しかし,θ-(BEDT-

TTF)2CsZn(SCN)4に僅かな不均化ゆらぎが見えるとの報告もあり,この物質の低温電子相に対する理解はまだ定まってい

ない。一つの有力な説は電荷フラストレーションによって電荷整列相が抑えられた電子状態と見る説である。この問題につ いては光学伝導度の計算を含む理論的な研究が現在進展しつつある。次年度はこれらの理論と比較できる低エネルギー 領域の光学伝導度を丁寧に調べることを計画している。さらに,電荷整列状態と金属相との境界領域にある超伝導相では 電荷ゆらぎを媒介とする新しい超伝導機構の理論が提案されている。電荷整列相が超伝導相に隣接している可能性のあ る物質としてβ”-(ET)4Ga(C2O4)3PhNO2があるので,この物質のラマンスペクトルの実験を超伝導転移温度の上下で実施す ることを計画している。

θ-型BEDT-TTFに限らず,分子導体一般に共通する問題として,θ-型BEDT-TTFの高温相の電子状態をどう理解するかと

いう課題がある。現在分かっていることは電荷密度が非常にゆっくり(10

−11

Hz以下)揺らいでいるということである。遅いゆ らぎの観測できるNMR では相転移温度よりもかなり高い温度領域で数kHz程度の遅いゆらぎが報告されている。しかし,振 動分光法とNMR 法で同じものを見ているかどうかはまだ確認されていない。例えばθ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4ではNMR

で観測されている遅いゆらぎが振動分光法では見えていない。両方法とも,ある周波数の窓を通過する信号を見ているだ けであるので,各温度におけるゆらぎの速さを実時間で観測する必要がある。人手が得られれば,温度ジャンプ法をもちい た時間分解ラマン分光を行いこの速さに関する情報を得たいと考えている。

電荷整列に伴う反転対称性の破れは強誘電的あるいは反強誘電的な状態を引き起こすと考えられる。今年度,誘電率測定 装置を立ち上げ,α−, β”, θ-型の代表的な物質の誘電率の温度依存性を測定した。三つとも異なった挙動を示しており,相 転移点に向かってゆらぎが発達するという単純な図式では理解できない。この問題をさらに追及することを計画している。ま

(5)

た,反転対称性の破れに伴い S HG に大きな変化が期待できる。山本薫助手がこの点に着目し,α-(ET)2I3について実験を 行ったところ相転移温度以下で急激なSHG信号の増大を観測した。相転移点以上の温度でも弱いながら信号が見えるな ど,不均化のゆらぎに対応するものが観測されており,相転移に伴う電子状態の変化を検出する探針となりうる。次年度は,

波長依存性やχ

(2)

の絶対値の決定も視野にいれた詳細な実験を計画している。

(6)

中 村 敏 和(助教授)

A -1)専門領域:物性物理学

A -2)研究課題:

a) T MT T F 系電荷秩序状態と基底状態の微視的研究

b)多周波 E S R 法による(TMTTF)2X 系のスピンダイナミックス研究

c) (TMTTF)2X の異常 g シフト:構造解析ならびに量子化学計算からのアプローチ

d)(B E D T -T T F )2MF6系の多周波 E S R による低温電子状態解明 e) 分子性固体の新機能探索

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) T MT T F 系の電荷秩序状態の研究も進み,その起源自体の理解が求められている。我々は将来的な中性子散乱測定も 念頭に置き,末端メチル基を重水素化した T MT T F 分子(TMTTF-d12)の合成を行った。一方で,分子性導体の場合に は,重水素化によるわずかな構造変化でも電子物性に大きな影響を与えることが知られている。我々は重水素化の 影響ならびに,T MT T F 系の電荷分離現象が純電子的なものか,あるいはアニオンとの相互作用によるものかを議論 するためにこれらの系に対して研究を行った。一連のT MT T F に対する実験の結果,カウンターイオンの対称性の違 いにより,電荷秩序転移温度(TCO)の重水素効果が異なることが分かった。我々が,T ype_ Iと称している四面体アニ オン系のR eO4では重水素化でスピン一重項転移温度がほとんど変わらないのに対し,T ype_ IIと呼んでいる八面体 アニオン系MF6塩では,S bF6塩で約 8 K ,A sF6塩では約 18 K にも及ぶ顕著なTCOの上昇が観測される。T MT T F 系の TCOの大きな圧力変化が報告されており,重水素化は化学圧力効果を起こしているとも考えられる。一般には C D の

結合距離がC Hより短いため,加圧方向へのシフトが期待されるが,TCOおよびsP転移温度の変化からは現象論的に は約0.5 kbar程度の負圧効果が起こっているように見える。我々は八面体アニオンの運動の重水素効果を調べるた めに,H 体と D 体の S bF6塩に対する19F NMR 測定を行った。八面体カウンターイオンの運動凍結は,H 体と D 体とも に電荷秩序転移温度(TCO)よりは十分に低く,電荷秩序形成が純電子的な起源によるものであることを強く示唆し ている。

b)擬一次元有機伝導体(TMTTF)2Xは,近年の電荷秩序状態の発見により,低温絶縁相におけるミクロスコピックな電 荷の振る舞いに興味がもたれている。我々はこれまでに(TMTTF)2X 系列の E SR 測定を系統的におこない,カウン ターアニオンの対称性とE S R 線幅の異方性との対応関係をもとにして低温絶縁相における電荷秩序状態が3つの グループに大別できることを提案した。 しかしながら,電荷秩序形成のメカニズムや電荷秩序状態で観測されるE SR 線幅の異方性や温度依存性についての定量的な理解は現在のところ十分ではない。(TMTTF)2XにおけるESR線幅の 振る舞いを特徴づける緩和機構についてさらなる知見を得ることを目的として,これまでに報告したX バンド(10 GHz)より高周波数帯の Qバンド(34 GHz)および W バンド(100 GHz)での E S R の測定をおこなった。(TMTTF)2S bF6

のX -,Q-,W -bandのE S R 測定の結果,g値の温度変化の振る舞いならびに絶対値は周波数依存性を示さず,観測して いるE S R 信号がcollectiveなものではなく,single particle 励起であることが分かった。また,g値が顕著な温度依存性 を示すことも分かった(下記c)項参照)。一方,E SR 線幅からも下記のような興味深い結果を得た。電荷秩序転移温度 以上の金属状態では,各周波数で絶対値ならびに温度依存性の違いは見られない。これはこの温度領域ではスピン

(7)

軌道相互作用を通じた伝導電子フォノン散乱による緩和(E lliot機構)が非常に速いために,10~100 GHz帯域の測定 では周波数依存性が見られないものと考えられる。ところが,電荷秩序形成温度以下では,顕著な周波数依存性が観 測された。X -bandから W -bandへと測定周波数が高くなるにつれ,E S R 線幅が増大していく。この傾向は反強磁性ゆ らぎによる臨界発散領域でより顕著になる。電荷秩序形成温度以下では,電子は局在するために,低温領域では緩和 は徐々にT2機構が支配的になっていく。詳細については検討中であるが,反強磁性状態へと系が向かう過程に於い

て,徐々にスピン−スピン相関時間が遅くなっていくためと考えられる。

c) 電荷秩序状態のメカニズムやスピン構造と分子構造との相関は,ほとんど理解されていない。また,b)項で述べたよ うにT MT T F 塩のうち比較的大きなカウンターイオンを持つ(T MT T F )2S bF6等の系では温度依存する異常なgシフト が観測される。このような異常は有機・無機固体にかかわらず非常に珍しいもので,T MT T F 塩でもB r塩やS C N塩で は観測されない。g シフトの温度変化は分子軌道が温度低下とともに変形していることを示唆している。そこで,

(TMTTF)2Xのスピン構造と分子構造との相関を解明するべく,室温並びに低温での構造解析を行い,その構造パラ

メータから密度汎関数法による分子軌道計算からgテンソルの理論計算を行った。X線測定はR igaku R -A X IS IV 回

折計とME R C UR Y C C D を用いた。分子軌道計算はGaussian03を用いて,g値はGIA O(Gauge-Including A tomic Orbital) 法より見積もった。SbF6塩では,温度低下に伴いbc面内で,異方性が小さくなる。この異常は徐々に起こっており150 K 近傍の電荷秩序転移とは直接の関連はない。また,先に述べたようにg値の周波数依存性がないことから,この異 常は T MT T F 分子のスピン分布に大きく依存していると考えられる。室温ならびに低温における構造からg 値の理 論計算を行うと,B r塩では実験と同じくg値の温度変化は予測されないが,S bF6塩では計算からも低温になるにつ れg値が等方的になっていく結果を得た。詳細については検討中であるが,T MT T F 分子の結合長が変化しているか,

二量体化などの効果によりフロンティア軌道のスピン分布が変化したものと考えられる。熱収縮の際にカウンター イオンがストレスになって,異方的な変形を受けているなどのことは十分考えられる。現在,種々の実験手法を用い, さらに詳細な研究を行っている。

d) B E D T -T T F 系の多彩な電子相を微視的な観点から理解するために,多周波 E S R を用いて研究を行っている。二つの 低次元反強磁性体γ-(BEDT-TTF)2PF6 とζ-(BEDT-TTF)2PF6(T HF )はS QUID 測定からは同程度の巨視的な交換相互作 用が見積もられるが,後述するように微視的なスピン間相互作用には顕著な違いがある。本研究では X - ,Q- および W -band E SR を用い,スピン相関の発達をE SR 線幅の観点から理解しようとするものである。①γ-(BEDT-TTF)2PF6は 小さなギャップをもった半導体であり,B E D T -T T F 分子がside-by-side方向に強い相互作用がある一元的な電子構造 をもつ。スピン磁化率は,低温まで有限の値を示し,強い一次元性を持った反強磁性体であると考えられる。古典的 な反強磁性体の振る舞いとは異なり,E S R 線幅は温度低下とともに減少する。また,170 K で異方性が変化しており 緩和機構のクロスオーバーが観測される。高温領域では,線幅異方性や温度依存性から遍歴的な電子スピン緩和が 支配的である。低温側では電子は局在しているので,スピン間相互作用が線幅を担っていると考えられる。この系で も,高温領域ではE S R 線幅に明瞭な周波数依存性が見られず,E S R 線幅のクロスオーバー温度以下で顕著な周波数 依存性が観測された。X -bandから W -bandへと測定周波数が高くなるにつれ,E S R 線幅が増大していく。低温領域で 優勢になってくるスピン間相互作用による緩和時間が,高温領域に比べて遅くなっていると考えられる。②ζ-(BEDT- T T F )2PF6(T HF )は,鎖間の相互作用が少なからずある構造になっているのでγ-(BEDT-TTF)2PF6よりは二次元性が強 い系と考えられる。ζ-(BEDT-TTF)2PF6(T HF )は,E S R 信号が 5 K で消失するとともに,その温度直上で E S R 線幅の発 散が観測された。このことから,5 K で反強磁性的な長距離秩序化が起きていると考えられる。このことと,常磁性領 域でのE SR 線幅が典型的な磁性体でよく見られる温度に依存しない振る舞いを取ることを考えると,この系が素序

(8)

の良い反強磁性体と見なすことが出来る。恐らくは,ζ-(BEDT-TTF)2PF6(T HF )の方が鎖間や面間の相互作用が大きい ために,長距離秩序が安定化するものと考えられる。現在,構造およびバンド計算の観点から,研究を進めている。 e) 分子性導体における新電子相ならびに分子性固体の新機能を探索するために,興味深い種々の系に対して微視的な 観点から測定を行っている。これまでの固体広幅 NMR 測定に加え,本年度から B rukerE 680,E 500 を用いた多周波 E SR 測定も精力的に行っている。NMR とE S R は相補的な測定であり,特に広い時間スケールで電子系ならびに格子 系のダイナミックスを理解することが出来る。本年度はT MT T F 系,B E D T -T T F 系および種々の分子性導体の研究を 行ってきた。また,協力研究ならびに共同研究を通じて,他の大学機関で開発された新規な系の電子物性・スピンダ イナミックスの研究も進行中である。

B -1) 学術論文

S. FUJIYAMA and T. NAKAMURA, “Charge Disproportionation in (TMTTF)2SCN Observed by 13C NMR,” Phys. Rev. B 70, 045102 (6pages) (2004).

T. SEKINE, N. SATOH, M. NAKAZAWA and T. NAKAMURA, “Sliding Spin-Density Wave of (TMTSF)2PF6 Studied with Narrow-Band Noise,” Phys. Rev. B 70, 214201 (13pages) (2004).

S. SHIMIZU, V. G. ANAND, R. TANIGUCHI, K. FURUKAWA, T. KATO, T. YOKOYAMA and A. OSUKA,

“Biscopper(II) Complexes of Hexaphyrin-(1.1.1.1.1.1): Gable Structures and Varying Antiferromagnetic Coupling,” J. Am. Chem. Soc. 126, 12280–12281 (2004).

L. O. HUSEBO, B. SITHARAMAN, K. FURUKAWA, T. KATO and L. J. WILSON, “Fullerenols Revisited as Stable Radical Anions,” J. Am. Chem. Soc. 126, 12055–12064 (2004).

H. MATSUOKA, N. OZAWA, T. KODAMA, H. NISHIKAWA, I. IKEMOTO, K. KIKUCHI, K. FURUKAWA, K. SATO, D. SHIOMI, T. TAKUI and T. KATO, “Multifrequency EPR Study of Metallofullerenes: Eu@C82 and Eu@C74,” J. Phys. Chem. B 108, 13972–13976 (2004).

B -2) 国際会議のプロシーディングス

T. NAKAMURA and K. MAEDA, “Competition Electronic States of (TMTTF)2MF6: ESR Investigations,” J. Phys. IV France 114, 123–124 (2004).

T. TAKAHASHI, R. CHIBA, K. HIRAKI, H. M. YAMAMOTO and T. NAKAMURA, “Dynamical charge disproportionation in metallic state in θ-(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4,” J. Phys. IV France 114, 269–272 (2004).

S, MOROTO, K. HIRAKI, Y. TAKANO, T. TAKAHASHI, H.M. YAMAMOTO and T. NAKAMURA, “Charge disproportionation in the metallic states of α-(BEDT-TTF)2I3,” J. Phys. IV France 114, 399–340 (2004).

T. TAKAHASHI, N. TAKAHASHI, T. NAKAMURA, T. KATO, K. FURUKAWA, G. M. SMITH and P. C. RIEDI,

“Magnetic characteristics of Fe4N epitaxial films grown by halide vapor phase deposition under atmospheric pressure,” Solid State Sci. 6, 97–99 (2004).

A. KAWAMORI, J. R. SHEN, K. FURUKAWA, E. MATSUOKA and T. KATO, “W-band EPR studies of Mn-cluster in the S0 and S2 states of Cyanobacterial single crystals,” Plant and Cell Physiology 45, 81–81 (2004).

M. HIRAOKA, H. SAKAMOTO, K. MIZOGUCHI, T. KATO, K. FURUKAWA, R. KATO, K. HIRAKI and T.

(9)

TAKAHASHI, “Spin soliton dynamics and pressure effects in the spin-Peierls system (DMe-DCNQI)2M (M = Li, Ag),” J. Magn. Magn. Mater. 272, 1077–1078 (2004).

B -7) 学会および社会的活動 学協会役員、委員

日本物理学会 名古屋支部委員 (2001- ).

日本化学会 実験化学講座編集委員会 委員 (2002- ). 電子スピンサイエンス学会 担当理事 (2003- ).

A sia-Pacific E PR /E S R S ociety S ecretary/T reasure (2004- ).

C ) 研究活動の課題と展望

本グループでは,分子性導体の電子構造(磁性,電荷)を主に微視的な手法(E S R ,NMR )により明らかにしている。平成16 年度には元加藤立久グループの古川貢助手が本研究グループに加わり,多周波・パルスE S Rという強力な手法も行えるよ うになった。また,IMSフェローとして昨年度末から原俊文氏が加わり,多周波E SR 測定とともに放射光での精密電荷分布測 定も行っている。放射光での実験は学術創成研究の主幹的な役割も果たしている。総研大生の前田圭介氏はこれまで X - band E S R を中心に研究を進めてきたが,さらに多周波 E S R ,NMR へと実験を展開している。NMR は分光器3台が稼働し, さらに高圧下・極低温下といった極端条件での測定システム構築を行っている。分子性導体における未解決な問題を理解

するとともに,新奇な分子性物質の新しい電子相・新機能を探索する。

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分子集団動力学研究部門

小 林 速 男(教授)

A -1)専門領域:物性分子科学

A -2)研究課題:

a) 新規な磁性有機伝導体の開発と物性 b)単一分子性金属の合成と物性

c) 分子集積体のナノ構造を利用した機能性分子システムの構築

A -3)研究活動の概略と主な成果

有機伝導体の研究は半世紀を超える長い歴史を持っている。新規な有機伝導体の開発は特に,四半世紀以前の有機 超伝導の発見以来急速に発展してきたが,近年は単純な有機超伝導体の開発の時代は終わり,分子特有の個性を生 かした従来の無機伝導体にない機能をもつ分子性伝導体の開発が求められる様になった。現在私達が取り組んでい る主な研究を以下に略記する。

a) 磁性超伝導体の電子物性は物性物理分野の中心課題の一つとして注目を集めてきた。私達は有機伝導体に取り込ま れた局在磁気モーメントとπ金属電子の相互作用により出現する新規な磁気伝導物性を示す新規な有機伝導体の 開発を目指し研究を継続している。これまでも欧州においても常磁性アニオンを内包した有機超伝導体や強磁性有 機分子性金属が発見され,それぞれ高い評価を得てきたが,これらの系はいずれも磁性と伝導の相互作用は無視で きる程弱く,磁性有機伝導体としての特徴を示すものではない。一方私達の見いだした磁性有機伝導体,例えば,λ- B E T S2F eC l4κ-BETS2F eB r4では局在磁気モーメントとπ 金属電子の相互作用に基づく磁場誘起超伝導や前例のな い絶縁相−超伝導相−金属相スイッチング現象などを示す種々の磁気伝導物性を示す磁性有機超伝導体や初めて の反強磁性有機超伝導体などが発見された。現在は類似系の開発を試みている状況である。

また,最近我々はスピンクロスオーバー転移や光誘起スピン転移トラッピング現象を示す新規な光−磁性−伝導, 多重機能分子性伝導体の開発を進めている。最近スピン転移と電気抵抗の履歴現象がカップルした前例のない分子 性伝導体を見いだした。伝導性を向上させることにより,光照射により磁性や伝導性を制御できる磁性分子性伝導 体の開発の可能性が考えられる。一方,数年以前より試みている安定有機ラジカル部位を持つπドナー分子による 伝導体は可能性を秘めた系であり,本研究室における開発は最終的には必ずしも磁性伝導体を目指しているもので はないが,本年度は本質的な進展ができなかった。

b)最近,初めての単一分子だけで出来た分子性金属結晶,Ni(tmdt)2の3次元金属のフェルミ面の形状を微小結晶を用 いた高磁場下の de Haas van A lphen ( dHvA )振動の実験や,第一原理バンド計算などによって明らかした。同時に私 達が提唱してきた,単一分子性金属の分子設計条件の妥当性が広く多くの研究者に受け入れられたものと思われる。 即ち,今回,私達が開発した単一分子性金属の結晶では,その構成分子は,①分子の HOMO, L UMO が伝導バンドを 形成すると同時に充分な大きさの二次元的分子間相互作用を持ち,②分子の HOMO-L UMO gap が小さく,“ 赤外領 域に電子遷移” を持つ“ 異常な分子” である,という条件を満たすことが必要であることが明らかとなった。 また,Ni(tmdt)2結晶と同型構造を持つA u(tmdt)2結晶では85 K 近傍に常磁性金属−反強磁性金属転移が観測され,そ

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れは核磁気共鳴の実験によっても確認された。このような「高温」で反強磁性(SD W )転移を示し,転移後も高伝導状 態を保つ様な伝導体は従来の分子性金属では例がないもので,非常に興味が深い。また,A u(tmdt)2結晶はナノサイズ の厚みを持つ新しいタイプの金属性ナノ結晶であることが判明し,そのキャラクタリゼーションを進めている。 c) 近年,ナノポーラス構造を持つ分子結晶を利用した機能性分子物質の開発が大きな注目を集めるようになった。私

達はナノポーラス構造を持つ分子磁性体を開発することを目的に,例えばナノポーラスフェリ磁性体Mn3(HCOO)6 および多くの類似物質の結晶を開発した。これまでにフェリ磁性体,弱強磁性体,反強磁性体などが得られているが, 最近,我々はこのような物質の誘電的な特性に注目し研究を開始している。

 B -1)学術論文

W. SUZUKI, E. FUJIWARA, A. KOBAYASHI, Y. FUJISHIRO, E. NISHIBORI, M. TANAKA, M. SAKATA, Y. OKANO and H. KOBAYASHI, “Structure of a Single-Component Palladium Complex with Extended TTF-Type Dithiolate Ligands, Bis(tetrathiafulvalenedithiolato)palladium Determined by Powder X-Ray Diffraction,” Chem. Lett. 1106–1107 (2003). A. KOBAYASHI, M. SASA, W. SUZUKI, E. FUJIWARA, H. TANAKA, M. TOKUMOTO, Y. OKANO, H. FUJIWARA and H. KOBAYASHI, “Infrared Electronic Absorption in a Single-Component Molecular Metal,” J. Am. Chem. Soc. 126, 426–427 (2004).

E. FUJIWARA, A. KOBAYASHI, H. FUJIWARA and H. KOBAYASHI, “Syntheses, Structures, and Physical Properties of Nickel Bis(dithiolene) Complexes Containing Tetrathiafulvalene (TTF) Units,” Inorg. Chem. 43, 1122–1129 (2004). Z. WANG, B. ZHANG, H. FUJIWARA, H. KOBAYASHI and M. KURMOO, “Mn3(HCOO)6: a 3D Porous Magnet of Diamond Framework with Nodes of Mn-Centered MnMn4 Tetrahedron and Guest-Modulated Ordering Temperature,” Chem. Commun. 416–417 (2004).

Y. OKANO, T. ADACHI, B. NZRYMBETOV, H. KOBAYASHI, B. ZHOU and A. KOBAYASHI, “Crystal Structure of [(C2H5)2(CH3)2N][Pd(dmit)2]2 at High Pressure,” Chem. Lett. 938–939 (2004).

H. TANAKA, M. TOKUMOTO, S. ISHIBASHI, D. GRAF, E. S. CHOI, J. S. BROOKS, S. YASUZUKA, Y. OKANO, H. KOBAYASHI and A. KOBAYASHI, “Observation of Three-Dimensional Fermi Surfaces in a Single-Component Molecular Metal, [Ni(tmdt)2],” J. Am. Chem. Soc. 126, 10518–10519 (2004).

H. FUJIWARA, H. -J. LEE, H. -B. CUI, H. KOBAYASHI, E. FUJIWARA and A. KOBAYASHI, “Synthesis, Structure and Physical Properties of a New Organic Conductor Based on a π-Extended Donor Containing a Stable PROXYL Radical,” Adv. Mater. 16, 1765–1769 (2004).

A. KOBAYASHI, E. FUJIWARA and H. KOBAYASHI, “Single-Component Molecular Metals with Extended-TTF Dithiolate Ligands,” Chem. Rev. 104, 5243–5264 (2004).

H. KOBAYASHI, H. CUI and A. KOBAYASHI, “Organic Metals and Superconductors Based on BETS (BETS = bis(ethylenedithio)tetraselenafulvalene),” Chem. Rev. 104, 5265–5288 (2004).

T. KONOIKE, S. UJI, T. TERASHIMA, M. NISHIMURA, S. YASUIZUKA, K. ENOMOTO, H. FUJIWARA, B. ZHANG and H. KOBAYASHI, “Magnetic-Field-Induced Superconductivity in the Antiferromagnetic Organic Superconductor κ- (BETS)2FeBr4,” Phys. Rev. B 70, 094514 (5 pages) (2004).

T. OTSUKA, H. CUI, H. FUJIWARA, H. KOBAYSHI, E. FUJIWARA and A. KOBAYASHI, “The Pressure Effect on the Antiferromagnetic and Superconducting Transitions of κ-(BETS)2FeBr4,” J. Mater. Chem. 14, 1682–1685 (2004).

(12)

E. FUJIWARA, A. KOBAYASHI, H. FUJIWARA, T. SUGIMOTO and H. KOBAYASHI, “Novel π-Extended Donors Containing a 2,2,5,5-Tetramethylpyrrolin-1-Yloxyl Radical Designed for Magnetic Molecular Conductors,” Chem. Lett. 964– 965 (2004).

Z. WANG, B. ZHANG, T. OTSUKA, K. INOUE, H. KOBAYASHI and M. KURMOO, “Anionic NaCl-Type Frameworks of [MnII(HCOO)3], Templated by Alkylammonium, Exhibiting Weak Ferromagnetism,” Dalton Trans. 15, 2209–2216 (2004). S. KUBO, Z. Z. GU, K. TAKAHASHI, A. FUJISHIMA, H. SEGAWA and O. SATO, “Tunable Photonic Band Gap Crystals Based on a Liquid Crystal-Infiltrated Inverse Opal Structure,” J. Am. Chem. Soc. 126, 8314–8319 (2004).

A. CUI, K. TAKAHASHI, A. FUJISHIMA and O. SATO, “Mechanism and Relaxation Kinetics of Photo-Induced Valence Tautomerism of [Co(phen)(3,5-DBSQ)2]·C6H5Cl,” J. Photochem. Photobiol., A 167, 69–73 (2004).

A. CUI, K. TAKAHASHI, A. FUJISHIMA and O. SATO, “Novel Co Complex with High Transformation Temperature of Valence Tautomerism,” J. Photochem. Photobiol., A 161, 243–246 (2004).

B -2) 国際会議のプロシーディングス

J. S. BROOKS, S. UJI, E. S. CHOI, H. KOBAYASHI, A. KOKAYASHI, H. TANAKA and M. TOKUMOTO, “Investigation of the Field-induced Phases in λ-(BETS)2FexGa1–xCl4,” J. Phys. IV France 114, 175–181 (2004).

L. BALICAS, V. BARYKIN, K. STORR, J. S. BROOKS, M. TOKUMOTO, S. UJI, H. TANAKA, H. KOBAYASHI and A. KOBAYASHI, “The Effect of Pressure on the Phase Diagram of the Magnetic Field-induced Superconducting State of λ- (BETS)2FeCl4,” J. Phys. IV France 114, 199–203 (2004).

T. KONOIKE, H. FUJIWARA, B. ZHANG, H. KOBAYASHI, M. NISHIMURA, S. YASUZUKA, K. ENOMOTO, S. UJI, M. TOKUMOTO, S. ISHIBASHI, D. GRAF, E. S. CHOI and J. S. BROOKS, “Strong Evidence of Field-induced Superconductivity and Shubnikov-de Haas Oscillation in κ-(BETS)2FeBr4,” J. Phys. IV France 114, 223–226 (2004). N. DRICHIKO, B. PETROV, V. N. SEMKIN, R. M. VLASONA, O. A. BOGDANOVA, E. I. ZHILYAEVA, R. N. LYUBOVSKYA, I. OLEJNICZAK, H. KOBAYASHI and A. KOBAYASHI, “A Comparative Mid-infrared Study of Superconductor BETS4Hg2.84Br8 and Metal BETS4Hg3Cl8,” J. Phys. IV France 114, 305–307 (2004).

Y. J. JO, H. KANG, T. TANAKA, M. TOKUMOTO, A. KOBAYASHI, H. KOBAYASHI S. UJI and W. KANG, “H-T phase Diagram of λ-(BETS)2FeCl4 under High Pressure,” J. Phys. IV France 114, 323-325 (2004).

S. UJI, S. YASUZUKA, H. TANAKA, M. TOKUMOTO, B. ZHANG, H. KOBAYASHI, E. S. CHOI, D. GRAF and J. S. BROOKS, “Phase Diagram of Magnetic-field-induced Superconductor in λ-(BETS)2FexCl4–xBrx,” J. Phys. IV France 114, 391–392 (2004).

A. KOBAYASHI, E. FUJIWARA, W. SUZUKI, M. SASA, Y. FUJISHIRO, E. NISHIBORI, M. TANAKA, M. SAKATA, Y. OKANO, H. FUJIWARA and H. KOBAYASHI, “Recent Progress in the Development of Single-component Molecular Metals,” J. Phys. IV France 114, 419–424 (2004).

H. J. LEE, H. B. CUI, H. FUJIWARA, H. KOBAYASHI, E. FUJIWARA and A. KOBAYASHI, “Development of New Magnetic Organic Conductors Based on Donor Molecules with Stable Organic Radical Part,” J. Phys. IV France 114, 533–535 (2004).

(13)

B -3) 総説、著書

H. KOBAYASHI, Y. OKANO, H. FUJIWARA, H. TANAKA, M. TOKUMOTO, W. SUZUKI, E. FUJIWARA and A. KOBAYASHI, “Development of Single-Component Molecular Metals and Magnetic Molecular Superconductors,” in Organic Conductors, Superconductors and Magnerts: From Synthesis to Molecular Electronics, L. Ouahab and E. Yagubskii, Eds., Kluwer Academic Publishers; Netherland, pp.81–98 (2004).

B -4) 招待講演

小林速男, 「分子性金属・超伝導体の開発はどこまで進んでいるか」, 第2回化学イノベーションシンポジウム(日本化学会), 東京 , 2004年 10月 .

H. KOBAYASHI, “Single-Component Molecular Metals—Molecular Design and Characterization of Nano-sized Crystals,” The 8th Japan-China Joint Symposium, Okazaki, November 2004.

H. KOBAYASHI, “Crystal Structures and Physical Properties of Magnetic Organic Superconductors,” The 7th R. O. C.-Japan Joint Seminar on Crystallography, Tokyo, November 2004.

H. KOBAYASHI, “Development of Dual-functional Magnetic Molecular Superconductors and Characterization of Single- component Molecular Metals,” The 6th RIES-Hokudai Symposium, Sapporo, December 2004.

H. KOBAYASHI, “Design and Development of New Magnetic Molecular Conductors and Nanostructured Moleculsr systems,” International Symposium on Construction of Nanostructured Molecular Assemblies with Novel Electrinic Functions, Osaka, December 2004.

K. TAKAHASHI, “An Approach to Photo-switchable Molecular-based Conductors: Ni(dmit)2 Salt with Fe(III) Spin-crossover Anion,” International Symposium on Construction of Nanostructured Molecular Assemblies with Novel Electrinic Functions, Osaka, December 2004.

B -6) 受賞、表彰

日本化学会学術賞 (1997).

B -7) 学会及び社会的活動

文部科学省、学術振興会等の役員等 学術審議会専門委員 (1999-2000).

特別研究員等審査会専門委員 (1999-2000). 学会誌編集委員

日本化学会トピックス委員 (1970-1972). 日本化学雑誌編集委員 (1981-83). 日本結晶学会誌編集委員 (1984-86). 日本化学会欧文誌編集委員 (1997-1999). J. Mater. Chem., Advisory Editorial Board (1998- ). 科学研究費の研究代表者、班長等

特定領域(B )「分子スピン制御による新機能伝導体・磁性体の構築」領域代表者 (1999-2001).

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科学技術振興事業団 戦略的創造研究推進事業「高度情報処理・通信の実現に向けたナノ構造体材料の制御と利用」「新, 規な電子機能を持つ分子ナノ構造体の構築」研究代表者 (2002- ).

その他の委員

日本化学会学術賞選考委員 (1995).

東大物性研究所物質評価施設運営委員 (1996-1997). 東大物性研究所協議会委員 (1998-1999).

東大物性研究所共同利用施設専門委員会委員 (1999-2000).

B -10)外部獲得資金

基盤研究(B ), 「高圧下のX線単結晶構造解析技術と有機結晶の高圧固体化学」, 小林速男 (1998年 -2000年).

特定領域研究(B )(磁性分子導体), 「分子スピン制御による新機能伝導体・磁性体に構築」, 小林速男 (2001年 -2003年). 戦略的創造研究推進事業(C R E S T ), 「新規な電子機能を持つ分子ナノ構造体の構築」, 小林速男 (2004年 - ).

C ) 研究活動の課題と展望

分子性伝導体の分野ではこれまでに膨大な知見が蓄積されている。最近このような知見を活かし,単純な分子性伝導体の 開発研究から脱却し,新規な分子デバイスへの展開を目指し,(光,磁場,電場などの)外力によって分子物質系の状態を制 御し,伝導性を大幅にコントロールすることができる多重機能性伝導体の開発が試みられている。これまで見いだしてきた 幾つかの磁性有機超伝導体や私達の最近の研究により可能性が明瞭に浮かび上がってきた光磁性分子性伝導体の開発 などが良い例である。一方,分子性伝導体開発研究にとって長年の目標でもあった単一分子だけで出来た金属結晶が実 現し,従来にない単一分子性金属の特色を生かした,新たな特性を持つ伝導体の開発の可能性など,新たな目標に向かっ て研究は前進しつつある。私達が明らかにした単一分子性金属結晶の分子設計条件を良く吟味すれば,私達が実現した ものとは異なるタイプの分子による単一分子性金属結晶を同様な考えに従って開発できることは明らかである。例えば,単一 種の純有機分子だけで金属結晶や超伝導体を同様な設計に従って作ることも可能な筈である。しかしその実現にはかなり 合成技術と忍耐が必要とされるものと予想している。

参照

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